システムエンジニアのフリーランスとして活動するのは、自分の思い描いた働き方を追求・実現できるのでとても気持ちが高鳴り、モチベーションも上がります。しかし、活動を始めるには、事前にやらないといけない事が結構あります。
この記事では、自身の経験を元に、実際に行った準備事項について記載します。1つ1つの準備事項は、それほど複雑ではないですが、数がそこそこあるので、フリーランス活動を始める日から逆算して予定を立てて進めると良いです。自分の場合は、会社員として働きながら準備をしたので、2か月の期間を掛けて準備しました。
フリーランスエンジニアになる前にやるべきことは、全部で6つあります。この記事では、主に行政手続きや調査に関する3項目について書いています。他3項目については、フリーランスエンジニアになる前にやるべきこと〔その2〕をご覧ください。
1.フリーランス書類の届け出
2種類の書類を、納税地を所轄する税務署に届出る必要があります。
納税地を所轄する税務署とは、フリーランスエンジニアの場合、多くはお住まいの住所を管轄している税務署となり、オフィスを使用する場合は、オフィスの住所を管轄する税務署となります。税務署一覧は、税務署リストをご覧ください。
1⃣ 個人事業の開廃業等届出書
税務署に「個人事業主として商売を始めました」というお知らせです。開業(事業開始)した日から1カ月以内に、納税地を所轄する税務署へ提出する必要がります。税務署に届け出る書類なので難しいイメージがありますが、ものすごく簡単な書類ですので安心してください。以下の項目を記載して提出します。
基本情報の項目
お名前、納税地(住居、事業所)、個人番号、職業、事業開始日、屋号(必須ではない)
事業に関する項目
項目名 | 記載内容 |
届出の区分 | 「開業」を選択 |
所得の種類 | 「事業所得」を選択 |
開業・廃業等日 | 「事業の開始年月日」を記載 |
開業・廃業に伴う届出書の 提出の有無 | 青色申告承認申請書を一緒に提出する場合、 「青色申告承認申請書」項目を選択 |
屋号は、あれば記載します。屋号は、商売上(社名のような感じ)の名前です。
屋号を持つメリット:
- 公私の区別が付きやすくなる。
名刺、銀行口座の名義、請求書などで使用でき、「個人としての自分」と「事業者としての自分」を区別しやすくなります。 - 相手からの信用を得られやすい。
人を雇用する、取引先を開拓する際に有効です。自分の時は、税務署での手続きの際に、初めて「屋号」という言葉を聞いたので、職員の方に教えてもらい、その場で屋号を考えて記載しました。
1か月以内に提出するとありますが、過ぎても罰則などは無いので、心配いりません。
ただ、その年の確定申告では、青色申告をできなくなります。
自分の時は、フリーランスで活動を始めてから6ヵ月後くらいに提出しました。結果、その年の確定申告は、白色申告となりました。
「個人事業の開業・廃業等届出書」の詳細や届出書のテンプレートについては、個人事業の開業届出・廃業届出等手続リンクを参照ください。
2⃣ 所得税の青色申告承認申請書
税務署から「あなたは青色申告をしてもいいですよ」という承認をもらうための書類です。青色申告する年の、3月15日までに税務署へ提出が必要です。ただし、青色申告する年の1月16日以後に事業を開始する場合、事業開始日に提出が必要となります。
承認申請といっても、提出内容に不備や問題がない限り承認されます。また、個人事業の開廃業等届出書と一緒に提出する人が多いですね。以下、主な記載項目となります。。
基本情報の項目
お名前、納税地(住居、事業所)、屋号(必須ではない)、職業
事業に関する項目
- 所得の種類: 「事業所得」を選択
- 簿記方式(簿記の記載方式): 「複式簿記」を選択
「簿記方式」は、「複式簿記」or「簡易簿記」の内、「複式簿記」を選択します。理由は、青色申告は、複式簿記で行う必要があるからです。自分の時は、どちらを選択するのか分からなかったので、税務署の職員の方に聞いたら、「複式簿記」を選択するように言われました。
「個所得税の青色申告承認申請書」の詳細や申請書のテンプレートについては、所得税の青色申告承認申請手続を参照ください。
「個人事業の開廃業等届出書」「所得税の青色申告承認申請書」も、税務署に届け出る書類なので難しい、審査が厳しいかなと思うかもしれないですが、ごくごく簡単な書類ですので心配いりません。決まった項目を記載して、ハンコして提出して終わり。分からない事があれば、税務署の職員に聞けば教えてくれる。そのくらい簡単な書類です。
2.社会保険の切り替え
以下、会社員を辞めてフリーランスになる前提での記載となります。
切り替えが必要な保険は2つあります。
1⃣ 国民年金への切り替え
厚生年金から国民年金への切替となります。切替の手続きは、現住所の市区町村の役所で行えます。切り替えると、役所から1年分の納付書が送付されるので、金融機関、郵便局、コンビニで支払いを行います。1年分、半年分 x 2の一括払いも行えます。
国民年金の支払い額は、所得税の控除対象となります。年金はいろいろと議論がありますが、所得税を軽減するために支払うと良いと思います。
2⃣ 国民健康保険への切替
健康保険から国民健康保険への切替となります。切替の手続きは、現住所の市区町村の役所で行え、切り替えると役所から1年分の納付書が送付されるので、金融機関、郵便局、コンビニで支払いを行います。1年分の保険料を8回に分けて支払いますが、まとめて支払いする事もできます。国民年金と同様、支払い額は所得税の控除対象となりますので、所得税の節税対策としても効果があります。
3⃣ 住民税の切替
住民税の切り替え手続きは不要です。何もしなくても、役所が勝手に行い、役1年分の納付書を送付してきます。1年分の金額を4回に分けて支払いますが、まとめて支払いもできます。上記2保険と違い、住民税は所得税の控除対象とはなりませんので、ふるさと納税を利用する事をお勧めします。
上記3つの保険は、クレジットカード払い(Yahoo「公金支払い」サービス)やネットバンキングを利用した支払いもできます。ただ、手数料が掛かる場合や領収書がもらえない場合があります。自分の場合、支払いの手間を省くため、それぞれの保険ごとに1年分または半年分をまとめて郵便局やコンビニで支払っています。
3.エージェント・SES企業を選択する際のポイント
1⃣ 手数料・マージン率
案件紹介会社(エージェント、SES企業)は、仕事を紹介する代わりに、手数料(マージン)を取ります。手数料の金額は、案件の月単価の内のxx%となります。そのxx%が大きいと、自分への取り分が少なくなります。逆に、xx%が小さいと、自分の収入が多くなります。そのため、手数料・マージン率がどの程度なのか事前に確認する必要があります。
2⃣ 担当者の人柄
「エンジニアファーストの営業担当」かどうかになります。担当者は一人でも多くのエンジニアを案件に入れたいです。そのため、エンジニアが渋っている案件でも、プッシュしてくる場合があります。その際、エンジニアが「No」と言い切れれば良いのですが、押し切られる事もあります。そのため、エンジニアの意志・気持ちよりも、自分の意志・都合を優先する営業担当は、好ましくありません。その場合は、担当を変わってもらう、または紹介会社を変えることをお勧めします。また、仕事が決まった後でも、定期的に連絡をくれるなど、気配りしてくれる担当者は信頼できます。
3⃣ マッチング
自分の得意スキル(Web系システム、ゲームなど)や希望(単価など)に沿った仕事を紹介してくれるかどうかになります。どんなに沢山の仕事を紹介してくれても、自分にマッチしない案件だと意味がありません。そのため、エージェントが保有してる仕事の数や、得意とするジャンル(例:Webシステム系、ゲーム、コンサル関連)を事前に確認する事は大切です。
仕事選びは、フリーランス活動に大きな影響を及ぼします。いい仕事に付ければ、フリーランスは楽しく、充実したものになりますが、マッチしない仕事をする事になると、大変な時間を過ごす事になります。そのため、自分が納得できるエージェントを見つける事が重要です。
4.まとめ
上記の3つが、フリーランスとして活動を始める前にやらないといけない事となります。具体的なやり方については、ネットでの調査がメインになると思いますが、知り合いに聞いてみたり、直接エージェントを訪問したり足を使って確認するのも良いかと思います。
自分の場合、気になるエージェントに直接訪問して、スタッフの方とお話をしました。古い考えですが、”百聞は一見にしかず”を意識しました。