フリーランスエンジニアは、仕事の性質上、開発案件(プロジェクト)を転々します。案件を変える度に、案件を探し・お客さんとの面談を行う必要があります。その際、スムーズに案件が決まれば良いですが、なかなか決まらない場合は、心配やイライラなどストレスが掛かります。そのため、フリーランスエンジニアによっては、一つの案件が決まると、何か特別な問題がない限り同じ案件を継続したい思いがあります。
自分も、一つの案件に継続して参加する事を望むタイプですが、その思いが強くなりすぎて、案件を失ってしまう事がありました。この記事では、フリーランスエンジニアとして参加した初めての案件で、保身に走った結果、逆に案件を失った失敗談に付いて記載します。
1⃣ やる気マックス。初めての案件への意気込み
フリーランスエンジニアとして参加する初めてのプロジェクトと言う事で、緊張と期待が絶妙に混ざり合った状態での案件参加となりました。
このプロジェクトでは、ECサイトの開発(製造・テスト)を行うのと併せて、プロジェクトリーダのサポートをお願いされていました。リーダは、設計・開発(プログラミング)、チーム運営、チーム間調整などのタスクが多くあります。それらタスクの一部を、リーダに代わり行うことでリーダの負担を減らす、という事をお客さんから期待されていました。当然、自身もその事は理解しており、積極的にリーダのサポートをすると決めていました。
プロジェクトが始まると、開発(製造・テスト)で多忙になり、終電で帰る毎日に一気に突入しました。そして、リーダへのサポートも意識し、なるべく難しい内容のプログラムを担当、且つチーム内の定例の実施の提案など、積極的にリーダの負担を減らす事に、自分なりに努めました。
2⃣ 気持ちの変化。別案件を探す事への不安・負担
ヘトヘトになりながらも、フリーランスにやりがいを感じながら積極的に仕事をしていました。しかし、ある日ふとある考えが浮かんできました。
- もし、このプロジェクトの契約が終了したら、また別のプロジェクトを探さないといけないのか。めんどい。次の案件が直ぐに見つかるか分からないから不安。
- このプロジェクトの契約金(超過金額を含む)は結構良いから、なるべく長くこのプロジェクトに居たい。
上記のように感じたことで、「プロジェクトに長く居るにはどうするのが良いか」を考えるようになりました。ある意味、フリーランスなのに、安定を求めたのです。そして考えた結果、「お客さんやリーダの心象を悪くしない」でした。具体的には、お客さんと喧嘩をしない、作業のミスをしないなどです。お客さんに嫌われなければ、契約は続くと考えたのです。守りに入った瞬間でした。
3⃣ 守りの仕事。リーダへのサポートの減少
守りに入った時から仕事のやり方が変わりました。一番変わったのは、リーダへのサポートの減少でした。当初は、積極的にチーム運営に関する考えを伝えたり、他メンバーへのサポートなどをしていたのですが、そのような対応が、大幅に減りました。理由は、チーム運営に関わると、リーダと意見の相違などで、雰囲気が悪くなるリスクがあると考えたからです。
また、他メンバーへのサポートも減らし、自分の作業を優先的に行いました。自分の作業でミスや遅延を発生させてくなかったからです。でも、働き方が変わると、お客さんやリーダから指摘されるのではとなります。しかし、特に何か言われる事はありませんでした。理由は、2つあります。
- リーダが責任感が強く、仕事を背負うタイプだった。
- リーダへのサポートは減ったが、プログラミングの量は多かった
要するに、自分の作業が忙しい事を理由にして、リーダへのサポートを減らしたと言う事になります。完全に自分都合の我儘、未責任なやり方でした。結果、リーダの作業は増加し、プログラミングとチーム運営の両方をフルで行う事になりました。
4⃣ チーム崩壊。リーダ欠勤・・・心の病
ある日の朝、出社したらリーダが連絡なしで出社していませんでした。しかし、午後には来ました。「ん!?」と思ったのですが、私用で連絡を忘れたのかなと思い、スルーしました。すると、次の日も、その次の日も、遅刻するようになり、1週間程続いたある日、リーダは来なくなりました。
さすがに、お客さん側も心配になったのか、お客さんの営業がリーダの家に行って、仕事に来るようにお話しをしていた様ですが、やはり来ないままでした。誰も、リーダが休んでいる理由は教えてくれませんでしたが、今思うと、リーダは「心の病」になったのだろうと思います。理由は、プロジェクトが忙しく、多くの作業を自分で抱えてしまったのが理由かと思います。
プロジェクトは、宙ぶらりんのままになってしまいました。自身この状況にどうすれば良いのか分からず、他のチームの手伝いをしながら、プロジェクトが再開される事を待っていました。しかし、新しいリーダも配属されず、プロジェクトが再開される事はありませんでした。
5⃣ お客さんからの苦言
ある日、昼食を食べていると、偶然お客さんの開発部の部長と隣になりました。その際以下の会話をしました。
- 自分「リーダのXXXさんの具合はどうでしょうか」
- 部長「まだ具合が良くないので、会社に来れそうにない」
- 自分「そうですか・・・」
- 部長「あなたには、期待していたんですけどねっ!!」
- 自分「・・・(え?何それ、オレのせい!?)」
怒りと落胆が混ざったような言い方で、大きな声で言われました。周りに座っている他のお客さんが、チラッとこちらを見ました。ただ自分は、「なぜ、オレ?」と言う気持ちが強く、それが不満に変わっていきました。
6⃣ 案件からの離脱
お客さんからの突然の一言から、お客さんへの不満・不信は強くなっていきました。「リーダへのサポートは十分ではなかったけど、リーダが会社に来なくなったのは、自分だけのせいではない。むしろ、お客さん側がもっとリーダのサポートをするべきだったのでは」との思いが強くなっていきました。そして、契約更新の時期が近づく頃、案件を脱退させてもらう様にお願いをしました。今思えば、自分から脱退の意志を示さなくても、契約更新は無かったと思います。
結局、案件に長く居るために取った対応が、案件を抜ける事のきっかけとなってしまいした。自分都合の考え・行動が、リーダを追い込み、そして案件を失う結果に繋がった。リーダが追い込まれた全ての原因が、自分の取った行動だけとは思いませんが、原因の1要素になったと思います。
7⃣ 教訓
では、どうすれば良かったのか。どうすれば、リーダが「心の病」にならず、また自分が案件を継続する事ができたのか。答えは、いろいろな事が考えられますが、その一つとして、自分が「フリーランス=不安定」をしっかりと理解する事、だったのではと思います。
フリーランスは、収入が上がる代わりに、仕事の保証が無くなります。仕事がない時期、仕事があってもすぐ契約が終わってしまう、など不安定な働き方です。なので、フリーランスになったら、その事をしっかりと受け止めて仕事をする必要があります。しかし、この時の自分は、フリーランスなのに安定を求めようとしました。根本的に間違った考え方でした。
「フリーランス=不安定」と言う事を、しっかりと自覚し、案件がなくなる事・新しい案件を探す事への覚悟がしっかりしていれば、リーダに対してもっと積極的に意見を言い、時にぶつかる事があっても、リーダへのサポートを微力ながらする事が出来たのではと思います。そうすれば、リーダが会社に来なくなる事を防ぐ一つの手段になったのではないかと考えています。
そして、自分はもっと長い期間、プロジェクトに居れたのではないかと思います。
8⃣ 最後に
フリーランスは、仕事があれば収入は多くなります。ただ、仕事は常にあるとは限りませんし、仕事が無いと収入はゼロになります。「フリーランス=不安定」です。フリーランスとして働くのであれば、そのことをしっかりと考え、覚悟をする必要があると思います。
今までの経験から、「フリーランス=不安定」を意識しすぎた案件は、比較的うまく行かない事が多かったです。逆に、「フリーランス=不安定」を恐れずに、お客さんと向き合った案件はうまく行ったと感じています。案件がなくなる事を覚悟して、思いっきり暴れるのが、フリーランスとして働く一つのポイントかもしれないです。